転換社債(CB)のご案内

株式に転換できる債券です。Convertible Bondという英語の頭文字をとって略 称で『CB』とも呼ばれています。平成14年4月の商法改正により 『転換社債型 新株予約権付社債』 という名称になりましたが、以前は 『転換社債』 の名称で広く認知されていました。あらかじめ利率(クーポン)や償還期限が決められている他、株式に転換できる価格(転換価格)が設定されており、期間内(転換請求期間)であれば、その発行企業の株式に転換する事もできます。

債券としての魅力

CBは債券ですので、一定期間ごとに決められた利息(クーポン)を受け取る事ができます。(利払いは半年毎、年1回など銘柄によって異なる他、最近は利息の無いゼロクーポンのCBも発行されています。)
また、満期になれば額面金額(通常100万円)で償還されます。

株価が上がればCB価格も上昇 (株価連動性)

わかりやすく具体的に考えてみましょう。
転換価格1,000円のCBを額面100万円で購入したとしましょう。この時の購入価格は額面100円につき100円とします。つまり元本は100万円という事になります。

  • わかりやすくする為、手数料などは考慮しません。

このCBは、

100万円÷1,000円=1,000株

その会社の株式1,000株に転換できる権利を保有していることになります。

その時株価が1,000円であればCBを買って株式に転換しても、直接株式を1,000株購入しても、取得費用は同じく100万円ということになり、市場でのCBの価格が100円であることが妥当と言えます。

ところが、もし株価が1,200円に上昇したらどうなるでしょうか。
株式を直接購入する為には120万円かかることになります。
一方この時もCBは依然1,000円で株式に転換できるわけですから、CBの市場での取引価格も理論上は100円から120円に2割上昇してもおかしくないわけです。
つまり、この時120円でCBを売却すれば、株式に転換しなくても、株式と同じような値上り益を得ることができます。

このように、株価が転換価格を上回り上昇していくと、CB自体の市場価格もその分上昇する性質があり、これをCBの株価連動性と言います。

株価が下がれば利回りが下支え(下方硬直性)

株価が値下がりした時はどうなるでしょう。
転換価格1,000円のCBは、株価が1,000円から800円、600円...と値下がりした場合、理論上は株価と同様に100円から80円、60円...と価値が下落します。
しかしながらCBは最初に説明したように、債券としての価値(一定の利息があり、償還日には額面で償還される)もそなえていることから、CB価格が下落した場合、額面100万円で償還される債券を、より割安で購入できるということにほかなりません。
額面より安く債券を購入できれば、その分は償還差益として投資家にとっては投資収益となります。つまり利回りが高くなるわけですから、デフォルトの危険性が高まらなければ、償還価格を極端に下回りにくく、これをCBの下方硬直性といいます。この特性からCBは、株価下落時でも下値メドをつけることが比較的容易となります。

以上のように、株価と連動した値上りが期待でき、株価下落時にも債券としての価値が下支えするというCBの値動きの特徴は、そのままCBの最大の魅力となっています。

CB投資のポイント

CB投資の最大メリットは、株価が上昇した時には、株価連動性で値上り益を享受できるし、もし値上りが見込めない時にも、利子を受け取って償還まで保有する事ができるということでしょう。

但し、転換社債は日々マーケットで取引されていますし、各銘柄によって利率、償還日、転換価格といった諸条件が異なります。

どのような投資スタンスでCB投資を行うか、またどのCB特性に重点を置いて銘柄選択をしていくかが、重要なポイントです。

値動き重視・値上り益を狙った投資スタンス

転換価格と現在の株価が近いCBは、株価連動性が高く、値上り益を積極的に狙える銘柄と言えるでしょう。しかし、既に株価との連動性を評価されて額面100円を上回る価格水準となっているCBを購入した場合、償還まで保有すると額面の100円で償還されますので、値下がりリスクが発生することになります。

値上りを期待して株価連動性の高いCBを購入する場合には、その銘柄の株式的価値や債券的価値を検討し、さらに将来の株価の値上がりが期待できるかどうかを慎重に考慮した上で、銘柄選択をすることが重要です。

CBの株式的な価値をはかる指標としては『パリティ』が用いられます。
株価から見て、CBがこれだけの価値をもっているという理論価格で、額面100円に対していくらかという金額で表します。

パリティ(円)= 株価÷転換価格×100

このようにパリティ価格を比較することによって、株式的価値の高さがはかれます。

ただ、実際CBが取り引きされている価格は、パリティどおりではありません。
債券的な価値や様々な要因によって、通常はパリティより高く買われる他、銘柄によっては安い値段がついたりします。

この、パリティ(理論価格)とCBの市場価格との差を『カイリ』と呼び、CBの価格がパリティよりどの程度高いか低いかを示した指標が『カイリ率』です。

カイリ率(%)=(CB価格-パリティ)÷パリティ×100

カイリ率が小さいほどCB価格と理論価格との差が少なく、株価連動性は高いと言えるでしょう。またカイリ率が大きい銘柄は、株価との連動性が乏しいという事になりますが、どの程度のカイリ率で株価と連動性を評価するかということは、個々の銘柄により条件が異なる他、株価の先高期待などによっても評価が分かれるところです。

利回りを重視した投資スタンス

マーケットで額面100円を割り込んだ価格水準にある銘柄を購入して、償還まで保有すればその差額『償還差益』を得ることができます。同時に一定の利息(クーポン)も受け取れるわけですから、高い利回りを実現することも可能です。ただし、100円を大きく割り込んだ価格水準となっている銘柄は、株価が転換価格を大きく下回っているケースがほとんどで、多少の株価の値動きでは、CBの価格に変化を与えることはありません。

CBの債券的な価値を重視して、好利回り銘柄を選定する為には、『直接利回り』と『最終利回り』をチェックすることが必要です。

投資元本に対しての利息の率が『直接利回り』です。

直接利回り(%)=利率(クーポン)÷投資元本×100

利率は同じでも価格を安く購入する事によって直接利回りはアップするわけです。
数ある銘柄の中から直接利回りの高い銘柄を選び投資すれば、所有期間中は投資元本に対して高い利息を受け取ることができます。

また、CBを償還まで保有した場合に、年平均の利回りがいくらになるかを表したものが『最終利回り』です。

最終利回り(%) 利率 +償還差益÷残存年数 ×100
投資元本

償還差益(償還額面-投資元本)と利率(クーポン)の合計を果実と考え、1年あたり何%になるかというのが、最終利回りです。額面価格100円以上のCBを購入しても、高い利率の銘柄を購入すれば、最終利回りの高い投資が可能となる場合もあるのです。

安全性を重視した投資スタンス

それでは、株価との連動性が高く、高い利回りの期待できる銘柄が投資妙味の高いCBと言えるでしょうか。

CBも社債ですので、あらかじめ決められた償還日に元利金が確実に支払われるかどうかが、最も重要な要素でもあると言えます。
各銘柄ごとにそういった元利金の確実性・安全性をはかる指標が『格付け』です。
第三者である格付会社が『AAA』・『Aaa』などの符号によって、各銘柄ごとに格付けを付しており、一般的にはBBB(Baa)格以上が投資適格債、BB(Ba)格以下は投資不適格債として色分けされています。
マーケットで日々取り引きされているCBは、この格付の違いによっても、価格水準や流動性が異なり、総じて格付けの低い銘柄は、安全性の裏返しから、利回りも高い水準に放置されているケースがあります。

株価連動性、好利回り、安全性、いずれのCB特性に重点を置くかを決めた後は、的確な投資タイミングをはかる事が大切です。

株価の値動きだけにCB価格が影響されるわけではなく、金利の情勢でも変化することを忘れてはいけません。株価の値動きには影響されない利回り銘柄でも、債券マーケットの動きには反応して価格水準が変動することがあります。また、格付けも見直される事があり、同じくCB価格に影響を与えます。
CBマーケットを取り巻く様々な情勢を加味して投資対象銘柄を選択し、かつ的確な投資タイミングを判断する事が、将来の投資成果へと繋がることになるでしょう。

CB投資の留意点

CB市場での売買ルール

CB市場で売買ができると、受渡し(清算)は通常、約定日(売買が成立した日)から起算して、3営業日目に行われることになっています。間に休業日が入る場合は日数に含めません。

額面金額ではなく 売買(約定)金額に対して、規定の手数料とその手数料に対する消費税がかかります。

またCBの受渡しには、『経過利子』の受け払いが発生します。
CBの売買は、多くの場合利払日と利払日の間に行われ、その場合 買い手は次の利払日に一括して利息を受け取ることになりますが、売り手は所有期間分の利息を受け取れません。そこで、受渡し時に買い手は売り手に対し、あらかじめ売り手が保有していた日数分の利息を支払うわけです。これを経過利子といいます。

株式転換の手続きについて

株式への転換手続きは、決められた転換請求期間内に行わなければなりません。
転換請求期間は、一般的には発行後1~2ヶ月ごろから償還日(満期日)の1日前までとする場合が多いのですが、銘柄によって異なることがありますので随時確認することが必要です。

付帯条項

CBには、利率、転換価格、償還日などがあらかじ定められていますが、それ以外にも、銘柄によって、様々な条項が付けられているものがあります。
発行時の条件が変更される条項もありますので、こういった条項も十分理解した上で銘柄選択をすることも重要です。

主な条項

  • コールオプション条項
    一定期間連続して株価が転換価格のコール水準を上回り推移した場合、発行会社側にそのCBを繰上償還する権利が発生するという条項です。
    コール水準や連続日数、また繰上償還できる日取りなどは銘柄により異なります。
  • 転換価格下方(上方)修正条項
    CB発行後決められた時点において、株価が直前の定められた転換価格を下回る(上回る)水準で推移していた場合、転換価格を下方(上方)に修正するという条項です。

上記以外にも様々な付帯条項がありますので、CB投資を行う際には、各銘柄の諸条件同様に付帯条項も十分考慮する必要があります。

転換社債投資の留意点

転換社債の価格は、転換対象となる株式の価格変動や金利の変動により上下しますので、これにより投資元本の欠損を生じる恐れがあります。また発行会社の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本に欠損を生じる恐れがあります。なお株式への転換を請求できる期間には制限がありますので、ご留意ください。